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Last-Modified: 07-Nov-30 05:31:51. JST

拠点概要

拠点形成の目的

20世紀は、科学・技術・産業などが飛躍的進歩を遂げると同時に、貧困・犯罪・テロリズム・地域紛争・戦争・環境破壊のような人類の宿痾というべき矛盾を克服することができず、21世紀においても、近代社会の限界から生ずる個人、社会、地球全体のさまざまなレヴェルにおける解決困難な課題が持ち越されている。学校教育という場面に限定して考えても、いじめ、校内暴力、不登校という学校関係者や保護者を悩ませる現象は、人間の心のあり方について大きな問題を投げかけてきた。人間が作り出すさまざまな制度や組織は、本来そこに生きる人間の心が活きるものでなければならないが、現実には制度や組織が人間を苦しめたり、心を萎えさせたりしている。

人間は、教育というものを通じて、知識と技能を獲得することによって自身が何事かをなすことができるという「有能感」を得、自然や社会とつながることによってこの世界に生きているという「生命感」を得る。さらに、この2つの感覚を一定の目標に向けて十分に発揮することによって何かをなしえた「達成感」というものが得られる。そこに、同時に「幸福感」というものを感ずることもできよう。反対に、このリンクの一部あるいは全部がうまく機能しないとき、様々な問題が起こってくる。心と教育の諸問題に注目が集まる今日の社会において、このような枠組みから「心が活きる教育」を研究する国際的教育・研究拠点を構想し、その諸問題に取り組む人材を育成する拠点の設置が強く求められており、本プログラムはそれに真正面から応えようとするものである。

拠点形成計画の概要

本プログラムは、21世紀COE「心の働きの総合的研究教育拠点」(平成14年度~18年度)の多大な成果を基礎として、京都大学の心理学および教育学の研究者が有機的に連携しながら、国際的に活躍する有為な人材育成のための新たな拠点を形成するものである。具体的には、「心が活きる教育」とはどのようなものかを解明し、それをどのように理解し、あるいは実践していくかについて、教育学研究科(教育科学専攻、臨床教育学専攻)、高等教育研究開発推進センター(第一部門)、文学研究科(行動文化学専攻)、人間・環境学研究科(共生人間学専攻)、および、平成19年度に設置される「こころの未来研究センター」に所属する心理学および教育学の研究者が参加して研究拠点を形成し、拠点リーダーが全体を統括しながら、(A)「心が活きる」とはどういうことか、逆に「心が活きていない」状態とはどのようなものかを研究する基礎過程、(B)「心が活きる」ために必要な制度設計と、それを社会に説明し実際に運用する仕組みについて研究するシステム、(C)「心が活きる」ために有効な心理的サポートや教育的かかわりのあり方について研究ならびに実践を行うサポート、(D) 以上の各ユニットが提案する理論・実践を「心が活きる」という観点から評価し、同時に国際共同研究として「幸福感の国際比較研究」を実施する開発評価、という4つの研究ユニットを中心に高度な水準のユニークな研究を進めていく。

人材育成の面では、心が活きる教育ということについて心理学・教育学の観点から深く考えることのできる高度の専門性と幅広い視野を持ち、外国語による論文の投稿や国際学会での発表など、国際的に情報発信ができる人材を育成するために、心理学・教育学の大学院教育を拠点全体で担う教育体制を一層整備・充実すると共に、国際拠点形成の活動として、米ミシガン大学、英ランカスター大学、中国中央教育科学研究所、北京師範大学、独ベルリン自由大学、英ロンドン大学教育研究所などの世界的研究機関との間に築いてきた学術交流協定に基づく教育・研究活動をさらに展開し、京都大学を世界中の心理学・教育学の研究者が研究の発展を求めて集まる拠点としていく。また、広い視野から深く考え、心と教育に関する諸問題の解明・理解・実践に貢献しうる人材の進路が、大学等の研究機関のほか、官庁・企業等にも広がるよう、その支援体制を一層整備する。

博士課程学生を含む若手研究者のテニュア取得にいたるまでの支援としては、大学院生に対する競争的人材育成経費(海外留学資金、院生養成プログラム研究費、研究開発コロキアム)の支援、公募によるポスドク研究員(5人)の採用、国際的公募による助教の採用(3人)、および、テニュア取得以前、あるいは、テニュア取得からまだ年数の浅い30歳代の若手教員に対する競争的研究費の支援などを行う。

以上のような活動を通じて、心理学と教育学が交差する新たな教育・研究領域の創成をはかり、京都大学の内部は言うにおよばず、学術全体における人文科学の発展に貢献し、社会の改革や改良に資する学術的情報を提供し、自らも有効かつ効果的な教育実践を行っていくものである。

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